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名松線の家城駅〜伊勢奥津間が廃線か?

 本年(2009年)10月8日に三重県など東海地方に豪雨と強風をもたらした台風18号によって、名松線の家城駅から伊勢奥津駅間の38ヵ所で土砂が流入したり、線路の下の土が削られたりする被害が生じた(朝日新聞10月30日)。台風の後、ずっと名松線の家城駅〜伊勢奥津駅間は不通になっていたが、地元では復旧工事がほとんど行われていなかったことからおかしいと思われていたが、10月29日にJR東海の関係者はこの区間をバス輸送に転換すると記者発表した。

 名松線は、家城駅から先の山間地域では雲出川と山の間の河岸段丘を走っており、台風のたびに運休することが多かった。JR東海は「安全、安定輸送の提供という使命を全うできない」として、赤字路線であり、復旧に多額の費用がかかる路線の一部を廃止にしたい考えのようである。

 本ホームページでも、名松線の将来性について危惧し、沿線の魅力を紹介し、観光の乗客を増やすための記事活性化の方法などを掲載し始め、微力ながら努力していたが、その時があまりに早く来てしまい、地元のサポート体制が間に合わなかったのではないかと危惧している。

 時の流れで自家用車が普及し、名松線の乗客数が激減しているのは事実であるが、鉄道の一部廃線によって、沿線地域の衰退が一層進むこと、民間バス輸送の本数が将来的にさらに削減されていくことが予想されること、車椅子の人や、お年寄りがバスの乗降に難儀するなど高齢化社会における利便性が失われること、美杉町へ行くのに鉄道からバスに乗り換えることが必要となり不便になり、今後の観光開発に不利になること、将来的に名松線全線の廃止が日程に上ってくる可能性が強まることなど影響は大きいと思われる。

 公共交通機関が民営化され、利益が優先されるようになると、赤字路線は廃止の対象となり、JR東海以外の地域では廃線になったところも多い。しかし、公共交通機関は、住民が生活していく上での基盤的なインフラであるので、資本の論理だけで進められるべきではなく、公共交通に責任の一端を担う企業として、東海道新幹線等の黒字分により補填を行うべきであろう。郵便局についても、民営化によって、過疎地域等の郵便事業で統合整理・撤退の方向が強まったが、政権交代で軌道修正が図られつつある。

 津市の松田市長は、復旧の要請をJR東海にすると報じられている。名松線の全線を維持するためには、三重県、津市、松阪市のある程度の財政的負担、沿線住民ができるだけ利用するなどの協力体制、沿線の観光開発・各種公共施設の配置など、乗客を増やし、地域を活性化するための創意工夫と様々な対策が必要である。地元住民と行政のサポート体制の構築とJR東海への強い要請がなければ、復旧や維持は難しい情勢にあると思われる。三重県、津市、松阪市、美杉町などの地元は、当該地域の将来的な展望を考えて十分に協議して欲しい。 (2009.11.1/M.M.)

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